
60歳夫婦の平均的な生活費はいくら?
総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は月平均で約22万6,383円となっています。
主な支出項目の内訳は以下の通りです:
| 項目 | 月額(円) |
|---|---|
| 食料 | 65,000 |
| 住居 | 13,000 |
| 光熱・水道 | 20,000 |
| 保健医療 | 15,000 |
| 交通・通信 | 30,000 |
| その他 | 83,383 |
年金だけで足りる?収入の実態と不足額
老後の生活費を年金でまかなえるかどうかは、多くの60歳夫婦にとって最大の関心事です。厚生労働省によると、いわゆる「モデル世帯」(夫が平均的な収入で40年間厚生年金に加入、妻は専業主婦)の年金受給額は、月額約22万8,372円とされています。
一方で、前述のとおり、夫婦2人の平均的な生活費は月22万6,000円前後とされており、年金のみで生活は一応成り立つ計算になります。
しかし、実際の生活では、突発的な医療費、家の修繕費、物価上昇なども想定されるため、「収支ギリギリ」では安心できません。老後のゆとりを得るには、年金に加えてある程度の貯蓄や副収入が必要となるのが現実です。
自分がもらえる年金額を正確に知るには?
「年金だけで生活できるか」を判断するには、まずご自身が将来もらえる年金額を正確に知ることが大切です。日本年金機構が提供するオンラインサービス「ねんきんネット」を使えば、無料で簡単に確認できます。
ねんきんネットでできること
- 将来の年金見込額の試算(受給開始年齢ごとの比較も可能)
- これまでの納付状況・加入記録の確認
- 過去の「ねんきん定期便」と同様の情報の閲覧
利用には登録が必要
利用には基礎年金番号とメールアドレスが必要です。マイナポータルやe-Tax経由でも簡単に連携でき、本人確認後すぐに利用開始できます。
60歳からの理想的な貯金額と資産配分
老後生活に向けて、60歳時点でどの程度の貯金があれば安心なのか、悩む方も多いでしょう。かつて話題となった「老後2000万円問題」は、年金だけでは不足する分として、夫婦で約2,000万円の金融資産が必要と示唆されていました。
2025年現在も、生活スタイルや持ち家の有無により必要額は異なりますが、概ね以下のような貯金・資産配分が1つの目安になります。
| 資産の種類 | 目安金額(万円) | 備考 |
|---|---|---|
| 現金・預貯金 | 1,000〜1,200 | 急な出費に備える |
| 年金(受給予定含む) | 月22万円 × 20年 = 約5,280 | モデル世帯の場合 |
| 退職金・企業年金 | 500〜1,000 | 会社によって差あり |
| iDeCo・NISA等の投資資産 | 300〜500 | 運用益も期待 |
| 持ち家の価値 | 評価額次第 | 売却やリバースモーゲージも選択肢 |
持ち家があれば住居費が抑えられ、生活に余裕が生まれます。一方で、賃貸の場合は老後の家賃支出が継続するため、より多くの現金資産を確保しておく必要があります。
住まい・医療・介護への備えはできている?
60代以降の暮らしでは、住まいや健康面への備えも重要なテーマとなります。特に医療・介護費用は想定外の負担になりやすく、現役時代とは異なる計画が必要です。
医療費について
日本では高額療養費制度により、一定額を超える医療費は払い戻しを受けることができます。たとえば、70歳以上で年収が約370万円〜770万円の方の場合、1か月の自己負担上限は57,600円です(※外来+入院を含む)。
制度を活用することで、重い病気や手術に備えることが可能です。
介護費用について
要介護となった場合には、介護保険制度により利用者負担は原則1割(所得に応じて2〜3割)となっています。平均的な自己負担額は月5〜8万円前後ですが、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど施設に入る場合はそれ以上かかることもあります。
住まいの選択
持ち家がある方は、リフォームやバリアフリー化の費用が必要になることがあります。賃貸の場合は、高齢者可の物件を早めに検討しておくと安心です。
貯金が少ない夫婦のリアルな選択肢
「貯金が思ったより少ない…」「2000万円なんて到底ムリ」そう感じている60歳前後の夫婦は少なくありません。しかし、今からでも備えられる選択肢は確かに存在します。
就労による補填
定年後も働ける環境は整ってきており、再雇用制度やシルバー人材センターの登録などを活用すれば、月5万円〜10万円ほどの副収入を得ることも可能です。年金と組み合わせることで、ゆとりのある家計を維持できます。
公的支援制度の活用
万が一、生活が厳しい場合は、生活保護や住居確保給付金(家賃補助)など、国や自治体の制度を利用できます。「資産がない」「年金が少ない」など明確な基準がありますが、相談だけでも社会福祉協議会や役所に問い合わせる価値があります。
家計の見直しと固定費削減
収入を増やすことと並行して支出の見直しも重要です。特に保険料・通信費・サブスクなどの固定費は、見直すだけで月数千円〜数万円の節約が可能です。
支出を減らして安心を得る節約アイデア
収入を大きく増やすのが難しい老後だからこそ、「支出を減らす」ことは現実的で効果的な対策です。ここでは60歳夫婦が無理なく実践できる節約術を紹介します。
サブスクリプションを見直す
動画配信や音楽、雑誌などの定額サービスを契約していませんか?使っていないサービスは思い切って解約しましょう。
シニア割引を活用する
交通機関、飲食店、美術館などでシニア向けの割引が使える場合があります。積極的に確認して使えば、年間数万円の節約も可能です。
自炊の頻度を上げる
外食や中食を減らし、食材を無駄なく使えるようになると、食費を大きく抑えることができます。特売やまとめ買いを活用するのもコツです。
電気・ガスのプランを見直す
地域の電力・ガス自由化により、自分の生活スタイルに合ったプランを選ぶことが可能になっています。比較サイトで最適プランを探してみましょう。
ポイント・キャッシュレス決済を活用する
日常の買い物をキャッシュレスにすることで、ポイント還元や割引の恩恵を受けられます。特にスーパーやドラッグストアでは差が出やすいです。
車の維持費を見直す
もし車の使用頻度が少ない場合は、カーシェアリングや公共交通機関への切り替えも検討しましょう。保険料・ガソリン・車検代などを抑えられます。
保険を整理・見直す
現役時代に契約した生命保険が今の生活に合っていない場合があります。必要最低限の保障に見直すことで、保険料を減らすことが可能です。
新聞や雑誌を電子版に切り替える
電子版なら紙媒体よりも月額が安く、保管スペースも不要になります。複数誌を購読している場合は特に有効です。
スマホプランを格安SIMに
シニアでも使いやすい格安スマホが多数登場しています。大手キャリアから乗り換えるだけで、月額数千円の削減も。
断捨離してフリマで収入化
使っていない衣類や家電をメルカリなどで売ることで、スッキリしながらちょっとした副収入も得られます。
貯金・年金・保険を一体で見直すタイミングとは
60歳を迎えるタイミングは、家計全体を見直す絶好の機会です。これまで積み上げてきた資産・加入中の保険・受給予定の年金などを一度すべて「棚卸し」して、老後に最適な形へと再構築していくことが大切です。
生活スタイルに合った保険の見直し
現役時代には必要だった保障が、退職後には不要になることもあります。例えば、子どもの独立後は死亡保障を縮小し、代わりに医療・介護への備えを充実させるのが一般的です。
年金受給額と生活費の差を把握する
「年金だけで足りるのか?」を明確にするために、ねんきんネットなどで受給見込額を確認し、生活費と照らし合わせましょう。不足がある場合は貯蓄の取り崩しや就労などの対策が必要です。
資産のバランスを整える
現金・預貯金・投資信託・不動産などの資産がバラバラになっていると、いざという時に使いにくくなります。生活費用・緊急用・資産運用用など、目的に応じて資産を整理しておきましょう。
専門家の無料相談を活用する
家計や保険の見直しは、自分たちだけで判断するのが難しい場合もあります。そんな時は、保険やライフプランの専門家による無料相談サービスを活用するのも一つの方法です。
60歳からの家計管理で老後はもっと安心に
60歳という節目は、老後に向けて生活を見直す絶好のタイミングです。平均的な生活費や年金額、必要な貯金額を具体的に把握することで、将来の不安はぐっと軽減できます。
また、医療や介護、住まいといった分野も含めた総合的な視点で準備を進めていくことが、安心したセカンドライフを送る鍵となります。
家計や保険の見直しを一度に行うことで、資産の最適化と支出の抑制が可能になります。自分たちのライフスタイルに合った方法を見つけ、夫婦で話し合いながら備えていきましょう。
将来の備えに不安がある方は、ぜひ無料相談もご活用ください。

